高機能義歯治療
義歯(取り外し式の入れ歯)には、歯がまだ残っている状態で装着する部分義歯と、1本も歯が残っていないときに装着する総義歯があります。なかでも、なにかと問題が起こりやすいのが総義歯です。なぜなら、歯がまったくないため義歯を維持、安定させることが難しくなるからです。総義歯治療の悩みは、落ちる、浮いてくる、かみ合わせが悪い、痛い、見た目が悪いなど様々です。すべての方のすべての悩みを解消できるとは断言できませんが、ご納得いただける義歯をご提供できるように最大限の努力を尽くし、必ずや改善を得ることはお約束させていただきます。その改善をより実り多きものにするために必要となりますのが高機能義歯治療です。
高機能義歯治療とは、保険治療の枠にとらわれず、治療方法、材質等を最適な選択のもとに最善の環境で治療を行うものです。総義歯、部分義歯を問わず、義歯にお悩みを持ちの方は、まずはご相談にいらしてください。今後の義歯ライフについてゆっくりとお話しさせていただきたいと思います。
高機能義歯システムによる総義歯製作の流れ
総義歯完成までの手順は、以下の4つのステップに分けられます。
- 1回目のお口の型取り・1回目の咬み合わせの位置づけ
- 2回目のお口の型取り・2回目の咬み合わせの位置づけ
- 義歯完成直前の歯並びと咬み合わせの確認
- 義歯完成・お口への装着
以下、各ステップの詳細について解説していきます。
1. 1回目のお口の型取り・1回目の上下咬み合わせの位置づけ
1回目の型取りと1回目の咬み合わせの位置づけは、既製の器具を用いて行います。このステップを正確に行うことで、総義歯形態の80%以上を決定することが可能と考えております。
なるべく1回の型取りで済ませたいのですが、理想的形態を型取りできるまで何度か型取りさせていただくこともあります。何卒、完成度の高い総義歯製作のためとご理解とご協力をお願い致します。
既製の器具を用いた1回目の型取り
(左図:上の入れ歯の型取り 右図:下の入れ歯の型り)
当医院では、1回目の型取りを単一の材料ではなく、性状の異なる2つの材料(低流動性の白の材料と高流動性のピンクの材料)を用いて行うことで、型取りの精度を向上させております。また、2色の分布状態から型取りの成否を判定することができます。
既製の器具を用いた1回目の上下咬み合わせの位置関係記録
咬み合わせの関係を正しく位置づけすることは総義歯の製作において最も重要であると言っても過言ではありません。従来法では、1回の位置づけで咬み合わせを設定しておりましたが、2回にわたり行うことでその精度を向上させております。
2. 2回目のお口の型取り・2回目の上下咬み合わせの位置づけ
先の1回目の型取りと咬み合わせ記録から得られた上下の模型と咬み合わせ関係から、2回目の型取りと咬み合わせの位置づけを行うためのオーダーメードの器具を製作します。これを用いて、最終の精密な型取りと咬み合わせの位置づけを行います。
このステップにおいて、義歯完成に必要な情報をほぼすべて入手しておかなければなりません。そのためには、保険治療の枠にとらわれることなく、あらゆる手法を駆使し、高品質の材質を最適な選択のもと使用し、妥協を許さない最善の環境で治療を進める必要があります。
咬み合わせの器械への1回目の付着
1回目の型取りから得られた上下の模型を1回目の咬み合わせ記録を基に、お口の動きを模倣できる精密器械に付着します。ここまでの作業を正確に行うことで、お口の中の情報の約80%を再現することができると考えております。その上で2回目の型取りを行う器具を、最高品質の材料を用いてオーダーメードで製作することで、2回目の型取りの精度を飛躍的に向上させることが可能となります。
オーダーメードの器具を用いた2回目の型取り
(左図:上の入れ歯の型取り 右図:下の入れ歯の型取り)
最高品質の材料を用いて製作したオーダーメードの器具を用いて、最高精度のシリコーン材料を2種類以上用いて、最終の型取りを行います。
オーダーメードの器具を用いた2回目の上下咬み合わせの位置関係記録
総義歯の製作において最も重要であるとされている咬み合わせの位置づけを正しく行うためには、最終的位置関係記録を2回目の型取り直後のタイミングで行うことが推奨されています。
3. 義歯完成直前の歯並びと咬み合わせの確認
完成直前の最終確認の段階です。お口の動きを模倣できる精密器械の上で最高品質の人工の歯を並べ、仮留めした完成直前の義歯をお口の中に装着し、歯並びの見た目の好みをご本人に確認していただきます。さらに、歯並びおよび咬み合わせがご本人の実際のお口の動きに調和しているかどうかを確認します。ここで必要があれば、微調整を加えます。
咬み合わせの器械への2回目の付着
2回目の型取りから得られた上下の模型を2回目の咬み合わせ記録を基に、お口の動きを模倣できる精密器械に正確に付着することで、お口の中の形態と動きをほぼ忠実に再現することができます。その上で、最高品質の人工の歯を多角的に十分に検討を加えながら並べることで、高い適合性と機能性を有する義歯製作の準備が整います。ここまでの作業が正確に進んでいれば、あとはこれをお口の中で確認するだけです。
4. 完成義歯装着
最終的確認と調整の後、義歯は高精度完成システムにより、最高の精度をもって完成されます。義歯装着後、必要に応じて口腔内での微調整を行うことで、さらにその適合性と機能性は向上します。
完成された総義歯
本総義歯には、高適合性と高機能性だけでなく、より自然観を与えるために、お口の中と同様に歯茎の部分に存在する毛細血管を再現する特別の技法を施してあります。